伯友会

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愛犬家のみなさまへ

今年でいよいよ51 歳、後期アラフィフ突入です。
LA伯友会の諸先輩からすれば「若いなぁ」になるのかもしれませんが、今の私が「若い」と言われそうな場所は、ついにここだけになってしまいました。
50歳ってもっとなんというかしっかりしたものだと思っていたのですが、中々現実は・・・
多分41期生の私が卒業した頃、佃先生が今の私ぐらいだったと思いますが、今思い返すとバケモノですね。

実は、ここ数年、LAで保護犬団体のボランティアをやらせてもらっています。
犬の保護活動を少しかじって感じるのですが、犬を取り巻く世界も、あの頃と今では大きく変わってきたようです。

私が初めて飼った犬は、友達の家で生まれた仔犬でした。
その友達の犬が死んだあと、ウチで生まれた仔犬をあげたりもしました。

その頃は、ウチの周りでは大体そんな感じだったと思います。。
お金持ちの家が、血統書付きの犬を飼っていたりということはあったのかもしれませんが、犬をお金を出して買うって言うことは、そのころ私が住んでいた奈良の田舎では聞いたことがなかった気がします。

飼うのはもちろん外飼い。
犬が家の中に入るなんて、考えられないというか、考えたこともありませんでした。

今は、どちらかというと室内飼いが主流になってきているように思います。
と言っても、日本を離れて27年、今の日本がどういう状況かはわかりませんが、ここLAでは外飼いが目立つのは、どちらかというとちょっと危ない地域になります。

時代や環境が変わることで、犬の状況も変わってきたということですね。
すごくおおざっぱに言ってしまうと、人間の生活と犬の生活が昔よりも大きく重なり合っているように思います。

この環境の変化の中で、犬の問題も随分と増えてきました。
無駄吠え、噛みつき等ももちろんそうですが、多分一番の問題は増やしすぎ、ということじゃないかと思います。

アメリカのペット保護団体最大手であるASPCAの統計によると、現在アメリカで飼われている犬は推定で7~8千万頭。これはちょっとすごい数字で、お隣の国、韓国の人口が約5000万人ですから、それをはるかに上回る数の犬がアメリカにいることになります。

その中で、シェルターと呼ばれる捨て犬の収容施設に入れられる犬が毎年約400万頭。実に神戸市の人口の2倍を大きく超える犬が毎年収容されています。そしてそのうちの約140万頭が運よく新しい家族を見つけ、約120万頭が毎年殺処分ということになっています。

シェルターや保健所というのは、もともと殺処分をする施設ではなく、放浪犬など飼い主からはぐれた動物の保護施設です。
それでもその収容能力には勿論限界があり、それを超える時、仕方なく殺処分という方法がとられます。アメリカの場合、その犬が放浪犬だった場合、つまり飼い主が分からない場合は飼い主からの連絡を待つということで比較的長く保護されますが、飼い主が直接持ってきた場合、殺処分のタイミングはずっと早くなり、そのシェルターの収容状態によっては1週間前後がリミットになってしまう場合もあります。

日本の現状でいうと、殺処分の数は大きく減っています。
私が初めて犬を飼った昭和40年代後半には年間1000万頭を超える犬が殺処分されてたそうです。
あの頃は、確かに野良犬をしょっちゅう見ていた気がします。だからこの頃の殺処分は野良が中心だったのでしょう。
今はどうかというと、環境省の発表によれば、平成26年度の統計で2万頭強だということです。
激減と言っていいと思いますが、内容を見ると今は飼い主の持ち込みが大半を占めているそうです。
日本の場合、短ければ保健所で生きていられるのは2泊3日
持ち込まれた日を1日と数えるところと、次の朝からカウントする所があるようですが、これがタイムリミットです新しい飼い主が見つからなければ、それで終わりです。
もちろん、保健所に余裕がある場合はもっと長く滞在できることもあります。

これを何とかしようとしているのが、民間の保護団体ということです。
行政も頑張ってくださっていますが、なんといっても税金ですし、この社会は犬好きばかりではありません。全員が犬好きで、みんなが犬を助けたいというのなら税金も沢山使えるのでしょうが、もちろんそんなことはありません。だから、犬好きが起こす犬の問題は、犬好きが何とかするしかないという当たり前の結論になります。なんとか、救える命は救ってあげたいと。

ただ、前述の通り、数が数ですから、全部という訳にはいきません。
また、安易に「殺処分0」を掲げると、また新たに問題が起きたりもします。
というのは、以前「殺処分0」を掲げた自治体があったのですが、近隣からその自治体に捨て犬が殺到するという事態になりました。みんな捨てはするけど、殺されるのは夢見が悪いんですね。
また、殺されないという前提が出来てしまうと、捨てるということのハードルがぐんと下がります。
気に入らなければ捨てればいい、ということにつながってしまうんですね。

実際、ウチの団体では、持ち込みは原則お断りしています。
自分でシェルターに持って行ってください、あなたのせいでこの犬が殺されるかもしれないという経験をしてください、ということです。
稀に引き受ける時もありますが、その時には犬を捨てる飼い主からお金をいただきます。
何もなしで引き受けて、あそこに持っていけば大丈夫なんて噂がたてば、うちなんかあっという間にパンクするからです。

では、殺処分0を目指さないなら何を目指すのか、というと、「捨てる飼い主、捨てられる犬0」を目指しています。
殺処分0で捨て犬の受け皿を大きくすると、結局犬を捨てるという蛇口が大きく開いてしまうことにつながるので、その蛇口を少しでも閉めることが先決だということです。

お手伝いするようになって3年ほどたちますが、その間に数百頭の犬が新しい家族に迎えられました。
そのうちで、私が知る限りで戻された犬(お試し期間を除く)はわずか数頭です。

私自身がやっていることとしては、最初は掃除や散歩の手伝いだけでしたが、ほどなくして「預かり」も始めました。

「預かり」は、飼うのではなく保護犬のままで自宅でその世話をすることです。保護犬の施設では様々なトレーニングが施されますが、そこでできない「実際の家庭」での環境に慣れさせることが目的です。といっても、実感としては普通に自分の犬のように可愛がって叱って遊んで生活するだけです。

その数が現在までで27頭。最近の犬は長生きするようになって、小型犬なら15年~20年は普通に生きます。それを27頭ということは、一頭ずつ飼っていれば400年ぐらいかかる話ですが、預かりならそれが3年ほどで経験できてしまいます。色んな種類、いろんな性格の犬と一緒に暮らすというのは、本当に面白いですね。一緒に暮らしていた犬がいなくなるのは寂しくないですか?とよく聞かれたりしますが、これは嬉しくて寂しくて嬉しい不思議な感覚です。教師が卒業生を送り出すのに似ているかもしれません。

今、日本でも多くの保護団体が、死に直面している犬をなんとか一頭でも多く救ってやろうと頑張っています。3万頭に近い保健所収容の犬を全部救うのは不可能に思えますが、それでもできる範囲で頑張っています。でも、もうちょっと輪が広がれば、決して不可能なことではないと思います。

伯友会の「犬好き」の皆さん、すでに犬を飼ってらっしゃる方、これから飼おうと思っていらっしゃる方、そのチョイスに是非「保護犬」を加えてやってください。
飼うっていう決心がつかない方、転勤が多くて犬を飼うのをためらっている方、海外赴任で犬を飼えないと思ってらっしゃる方、「預かり」って手があります。是非お近くの保護団体にお問い合わせください。
今日本で犬を飼っている世帯の数は約800万。このうちのわずか0.4%のお家が保護犬を迎え入れてくれることが出来れば、日本中の保健所が空っぽになります。
こうしてみると、決して不可能ではないと思うんですよね。

(41期:牧野明久)