宗清裕之(33期)著「スタジオが燃えている」書籍紹介

同期(33期)の最も尊敬する親友の一人に宗清裕之がいる。あいうえお順で名前が近いので中一のクラスで席が近く、オリエンテーションの初日から仲良くなった。中学時代から洋楽好きで、シルヴィ・バルタンに恋をしたかと思えばいつの間にかシカゴやディープ・パープルにはまっていったハードロック大好き少年。心優しく誰からも好かれるオチャラケの人気者だった。学校に内緒でよく大阪フェスティバルホールや厚生年金会館にも出かけて行っていたようだ。高校時代組んでいたバンドではキーボードを奏でたが、ドラム・ギター・ベースも器用にこなした(本人は否定しているが)。彼のロック愛は冷めることなく、早稲田大学卒業後当然の如く(と私は思っていた)レコード会社に就職した。新人時代は確か当時の人気アイドル河合奈保子の担当プロモーターで、正直とても羨ましかったのを思い出す。転職先のレコード会社では演歌の大御所にも可愛がられた。しかし彼が本当に愛した音楽はやはりハードロックだった。社会人としてのファーストステージ五千日をかけて日陰的存在だった日本のロックシーンを制作現場から支え、牽引し続けた。

そんな宗清が回顧録を出した。題して『スタジオが燃えている』。言わずと知れたイエローモンキーの名曲「太陽が燃えている」をオマージュしたタイトルだ。日本コロムビア時代の活躍を中心とする330ページに及ぶ大作。彼の音楽人生前半の集大成。生い立ちから六甲・早稲田の学生時代、販売プロモーターから制作ディレクター・プロデューサーへ、言うことを聞かないアーティスト達、業界での様々な葛藤等々を赤裸々に綴った酒と汗と涙のストーリー。よく泣く男である。

彼が苦楽を共にし育て上げた代表的なアーティストは、ラウドネス、レッドウォーリアーズ、イエローモンキーといった面々。40代50代のロックファンなら誰もがご存じの筈。ロックに馴染みのない方でもバラエティー番組によく出演しているダイヤモンドユカイがレッドウォーリアーズのリードヴォーカルと聞けばお分かりになるだろう。イエローモンキーは数年前に紅白歌合戦にも出演している。俳優及川光博をロック歌手にしたのも宗清だ。

常に理想を求めたがるアーティスト達と、利益追求を宿命とするレコード会社との板挟みに喘ぎ続けたが、一貫していたのはバンドメンバーの一員になって仲間を理解し苦楽を共にしようと懸命にもがく姿だ。

この本に記されている、LAでのイギリス人プロデューサーの録音手法に対する驚き・戸惑い・反発、しかしまたそこから世界の最先端技術を必死に吸収する貪欲さ、そして「レコーディングを通してバンドは上手くなる」という信念、「日本語の曲を聴く人にとって、最後に行きつくところは歌詞だ」というこだわり、「過去の音楽へのリスペクト」も強く心に残る。

解散したり移籍していくアーティスト達との別れ・虚しさ・わだかまり・責任・後悔は読んでいて切ない。しかし彼の心底に流れるものは去り行く一人一人へのシンパシーと、共に成長していこうという願いだ。そこには六甲時代から少しも変わっていない宗清がいた。だから彼らはたとえ袂を分けた後でも宗清の下に集まってくる。生きる世界は違うが私もその一人でありたいと願う。

この本は今まで宗清裕之に関わってきた音楽人たちへのオマージュに溢れた一冊だ。

(33期 山口明彦 記)