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緊急OB講演会報告  外務省・在ジブチ大使館医務官・参事官 後藤浩也氏(46期)

  

 

「医師として、外交官として、海外で働く ~六甲中学・高校で学んでおいてよかったこと もっと勉強しておけばよかったこと~」

7月11日(火)、期末試験の答案返却授業後、全校生がザビエル記念講堂に集まりました。壇上には46期卒業生の後藤浩也氏。自衛隊で医官として活躍され、現在は外務省医務官として在ジブチ大使館で勤務。今春、スーダンからの邦人待避に際して、健康管理・調整活動に携わりました。このときの報道映像に後藤さんが登場したことがきっかけとなり、緊急講演会が企画されました。

後藤さんの夢は医師と外交官でした。通常、このふたつは全く違う職種と思われますが、現在後藤さんは外交官パスポートを持つ医師として活躍しています。後藤さんの夢はどのようにして実現したのでしょうか。

後藤さんは東大をめざすも失敗、防衛医大を経て、医官として自衛隊に入隊。アメリカに派遣されて医師として研鑽を積むとともに、米軍司令部でも勤務しました。2010年のハイチ地震に際しては、南部マイアミで、自衛隊緊急援助隊の連絡調整にあたり、翌2011年の東日本大震災では、米軍による「トモダチ作戦」受入れに際し、調整役を務めました。そして2022年外務省に移り、在ジブチ大使館医務官として現在に至ります。このような後藤さんの経歴をみると、豊富な海外経験や対外調整活動の実績が、二兎を追う夢の実現につながったといえるでしょう。

ジブチは海外で自衛隊の拠点がある唯一の国ですが、他に数カ国の軍隊が駐屯し、共同で海賊対処行動を行っています。海賊といっても、漁船のような小舟で航行する巨大なタンカーに乗り付け、乗組員を人質にとって身代金を手に入れることが目的で、通常流血の惨事にはならないそうです。各国の軍隊の役目は、海賊船がタンカーに近づかないよう、空と海から監視することです。

外務省医務官としての後藤さんの仕事は、医務室での勤務(医療活動)、現地の医療事情把握(各国軍の医療関係者との情報交換や、近年拡大しているマラリアに関する情報収集など)、邦人保護(コロナの重症患者のチャーター機による搬送)です。これらの仕事すべてに、医療知識とコミュニケーション能力が必要だと、後藤さんは語ります。そしてその基礎を作ったのは、六甲の学びだったというのです。

まず六甲がカトリックのミッションスクールであること。海外では宗教色を帯びた儀式に参列する機会があるけれども、その際に相手の気分を害さない配慮ができることは、立派なコミュニケーション能力であり、六甲でのミサ経験が役に立ったそうです。また古文・漢文は異文化理解に役立ち、現代国語や数学は論理的思考につながったとのこと。化学の知識は、後藤さんの専門である眼科で役立ち、六甲であまり勉強しなかった物理も、光学器機を理解するために、学び直したそうです。また英語、特に文法の知識は、現在のフランス語学習に大いに役立っており、地学の知識は、ジブチの風土(アフリカ大地溝帯や塩湖など)の理解に資するところが大きかった・・・。六甲の学びが、後藤さんにとっていかに有用で大事なものだったかを強調なさいました。そしてみなさんも六甲でよく学び夢を実現してほしいと、後輩たちにエールを送ってくださいました。

これほど興味深い講演会は初めてだと、終了後の交流会に駆けつけた生徒がいました。大きな身体と大きな声で、気さくに後輩たちに語りかける後藤さんの姿は大変印象的で、後藤さんの背中を追って、医療や外交の道に進む生徒が現れるかもしれません。

 

(40期 山岸禎一)